世界には約200の国があり、それぞれに独自の“国旗”が存在します。
国旗は単なるデザインではなく、国家の歴史、文化、理念を象徴するもの。
その中でも、動物をモチーフにした国旗は、特に象徴性の強い存在として知られています。
今回は、そんな「国旗に描かれた動物たち」に注目し、それぞれに込められた意味や由来を紐解いていきます。
ブータン:雷のドラゴン「ドゥルク」
アジアの秘境・ブータン王国の国旗には、堂々とした白いドラゴンが描かれています。
このドラゴンは「ドゥルク(雷龍)」と呼ばれ、ブータンを守護する伝説上の存在。
王権の象徴である黄色と、仏教を表すオレンジの背景の中心にいるこの龍は、国民の信仰と精神力を表しています。
「雷の国(ドゥルク・ユル)」と呼ばれるブータンならではの誇りが込められています。
カザフスタン:空を舞う黄金のワシ
中央アジアの大国・カザフスタンの国旗には、黄金のワシが翼を広げて描かれています。
これは「ステップ・イーグル」と呼ばれるワシで、自由、力、独立を象徴。
遊牧民の伝統を持つカザフ文化では、ワシは神聖な存在であり、空からすべてを見渡す存在として尊ばれてきました。
ワシの下には、伝統的なカザフ模様も添えられ、民族の誇りがあふれています。
スリランカ:国旗に現れた“牙の守護者”
スリランカの国旗には、金色の背景に赤いライオンが剣を持って描かれていますが、
実はこの「ライオン」は、かつて島を統治していたシンハラ王朝の象徴であり、民族名「シンハラ」はサンスクリット語で“ライオンの血を引く者”という意味も持ちます。
さらに旗の縁にある4枚の菩提樹の葉は、仏教との強い結びつきを示しており、動物と宗教と歴史が見事に融合した国旗の一例です。
モンテネグロ/スペイン:双頭のワシ/王家のライオン
モンテネグロの国旗に描かれているのは、2つの頭を持つワシ「双頭の鷲(イーグル)」。
これは東ローマ帝国(ビザンティン帝国)以来の皇帝の象徴であり、ヨーロッパのいくつかの国でも王権を象徴する動物として使われてきました。
また、スペインの国旗に描かれている紋章にも「王家のライオン」が見られます。
ヨーロッパでは“ライオン=勇敢さと王家”という意味が根強く残っており、権威の象徴とされてきたのです。
ウガンダ:立つホロホロ鳥の謎
東アフリカ・ウガンダの国旗に描かれているのは、ウガンダの国鳥「ホロホロ鳥(Grey Crowned Crane)」。
この鳥は美しい冠羽を持ち、威厳と優しさを兼ね備えるとされ、ウガンダの「平和」と「優雅さ」を体現する存在です。
黒・黄・赤の横縞の中央に立つこの鳥は、他国の国旗にはない独特な静けさと上品さを感じさせてくれます。
意外な候補:スペイン・モザンビーク・メキシコなど
国旗に直接動物が描かれていなくても、国章(紋章)の中に動物が登場する国も多くあります。
例えば、メキシコの国旗中央には「サボテンの上で蛇をくわえた鷲」、
モザンビークでは「銃と本と鍬と星」、スペインでは「城・獅子・鎖」など、複数の象徴が組み合わさっています。
これらは一見すると複雑ですが、動物が「力」「知恵」「独立」などの概念を“視覚化”するための存在であることがわかります。
まとめ:動物は国の魂を映す鏡
国旗に動物が描かれるのは、単に見た目が映えるからではありません。
それぞれの動物は、国の歴史・民族・価値観の象徴であり、
その国の“魂”を視覚的に伝えるメッセージでもあります。
今後、国旗を見かけたときは、そこに描かれた動物にもぜひ注目してみてください。
それは、その国の“ストーリー”を知るきっかけになるかもしれません。